(妻)一つは子どもたちの教育環境ですね。子どもたちはバングラデシュのダッカの日本人学校に行ってましたけど、すごい少人数なんですよ。幼稚園から中学校まで合わせて50人くらい。学年関係なく、仲良しで、先生の目も届く中でずっと育ってるんですね。日本に帰って来ることになったときに、田主丸の学校に入れるのか、私の地元の神奈川県茅ヶ崎市の学校に行かせるのか、2つの選択肢がぼんやりあって。でも、茅ヶ崎の学校だったら1学年100人なんですよ。こっちは全校で100人未満なので、どちらが子どもにストレスがないかと言ったら、やっぱりこっちだったんです。
(夫)僕自身は、どっちでも良かった。でも、やはり子どものことを考えると田主丸になるなと思いました。
(妻)もう一つは、家の大きさもありますね。私は茅ヶ崎にマンションを持っていましたが、家族4人が住むにはちょっと厳しいなと。それで、夫の実家に居候することにしました。茅ヶ崎は、東京まで電車で1時間ですが、地価が高く、一軒家の庭で畑が出来るような環境って無理なんです。田主丸だと久留米の街なかに行こうと思えば、車ですぐに行けるし、福岡までもすぐに行こうと思えばいける。街の暮らしが恋しいと思う人には厳しいかもしれないですけど、私はたまに街に行くくらいでいいのかなと思いました。
(夫)僕は、都会暮らしが嫌なんですよ。東京で大学に行ってた時、満員電車に、「これに入るの?入るとこないじゃん!」ってね。満員電車の通勤生活を思うと、「絶対いやだ、無理」って。
(夫)2018年に日本に戻って、しばらく田主丸の実家にいたんですけど、息子の先生が古民家を改造して住んでいて、「あ!これ、面白い!!」って思ったんですよね。民泊もできるんじゃないかと思って。何軒も物件を見て回った結果、うきは市の物件に決めようかなと思っていたときに、今の家が売りに出されて。僕が見に行って、すぐに妻も呼び出して、その日のうちに買おうってことになった。築80年の木造住宅ですが、市場に出回らない太い柱、梁で作られていてそれがとても気に入って。眺めもいいし、家そのものとの出会いですよね。
(夫)ネット回線がすぐに使えなかったこと。光回線は使えるが、申請後、工事をして開通するまでに約6ヶ月かかる。引っ越してからしばらくは無線回線を利用したけど、通信がすごく不安定で。
(妻)不便なところは、車がないと買い物も行けないこと。茅ヶ崎は車要らないし、逆に自転車のまちなので、道も狭く、駐車場代も高くて、車を持つ方が合理的でないんです。だから、免許は持ってましたがペーパードライバーで。ここに住んでから、娘の幼稚園の送り迎えで練習して、今はだいぶ慣れました。
(注意)田主丸の光回線について、 現在は1~2ヶ月くらいで開通しているそうです。
(夫)山。耳納連山。
(妻)田主丸の魅力になるけど、空も綺麗ですよ。星空が。山もです。茅ヶ崎の海も恋しいけど、山の暮らしにだいぶ慣れました。一日の中でも、山の景色が朝と昼と夕暮れで違って、すごく表情が変わるのもいいですね、贅沢ですね。
福岡空港も近いんですよ。今は(コロナで)こんな状況なんですが、海外に行く仕事とかも、また出来るようになったらいいなと思ってて、関東に住んで成田空港から出ようとすると、成田まで道のりが遠いし、成田の出入国審査も時間がかかる。そういう意味では福岡の方が便利でいい。
(夫)税関も出入国審査も「おかえりなさーい」ってゆったりした感じがあって、そこまで車で1時間でアクセス出来るっていうのは、やっぱりいいですよね。
(妻)田主丸地域には7つ小学校がありますけど、その中で通っている柴刈小学校はこじんまりとした少人数教育で、みんな、学年越えてお友達。地域での見守りもあります。中学校は1つで、7つの小学校から全員が同じ中学校になる。山からも川っぺたからも色んな環境の子が集まり、教育環境は良いと思います。
だけど、息子は虫や魚には興味がなく、夫の影響でゲームばっかり。
(夫)でも耳納連山の鷹取山に家族で登った時は、息子が頂上に一番乗り。結構体力あるなと思った。農作業も嫌がりながらも良く手伝ってくれるんですよ。
(妻)長女は海も好きだけど、ここみたいな田舎の方が好きと言ってます。ゲームもするけど絵を描いたりお友達と外で遊んだりするのも好きだし、バランス良く育ってますね。
(夫)この家を直したいです。1階は住めるようにしたんですが、2階が手付かずで、2階をもう少し民泊として機能させられて、併せて我々の居住スペースが確保できるようにしたいなと思ってるんです。今、1階の奥の6畳間に家族みんなで寝てるんですけど、いずれ息子の部屋を作りたい。
久留米に「泊まらん農(農家民泊)」をもっと拡げたい。今7軒あるけど、もっと数を増やしたい。中学生の修学旅行を受け入れられるような体制を本当は作りたい。
あと、この家を買って直した自信もあったので、ぼろ戸建てを買って自分で直して賃貸に出すっていう商売を始めました。
(妻)今色々と物件を物色しています。移住したい方のお家のリフォームもお手伝いしますよ。
(妻)都会暮らしをやっている方が、田舎暮らしをする時にちょっと戸惑うところは、ご近所付き合い。隣組のお知らせやお宮の掃除など、町方ではおそらく無い自治会活動が活発なんです。コミュニティが小さいので、移住してきたら周りがみんな知ってる。だから、困った時は放っておかれない。それが嫌だって思わないで、逆にこちらから懐に飛び込んでしまえば、良いことばっかりなんです。でも、なんか、それが嫌だなって思い始めたらしんどいのかなと思う。
(夫)田舎暮らしをやるとなると、結構、自然相手に細々したイレギュラーなことが発生するんです。その対応に、ちょっとした修繕など自分で楽しんで出来るといいですよ。
田中秀喜さん/優子さんご夫妻
夫は高校卒業後、大阪に就職。その後、青年海外協力隊としてバングラデシュへ。帰国後東京の大学に入学し、学生時代に神奈川県出身の妻と結婚。卒業後、再び夫婦でバングラデシュへ。子ども2人の4人家族となり、帰国後、久留米市田主丸町へUターンし、農家民泊を経営。